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Mechanic Lights_edited.jpg

Red Line

人類が宇宙へと進出してから数百年後の未来
コロニー”スカイ・スフィア”では
あるゲームが注目を集めていた…


カスタマイズ
ロボットアクション
シューティング
シミュレーション
オンライン
バーチャルリアリティ

『CrossOver(クロス・オーバー)』

 


画期的なシステムと大迫力のサウンド
そして、非常に現実味のあるグラフィック
第1位のシェア率を誇るこのゲームは
スフィア間で大ブームとなった

そんな最中行われた、開発側の
ネットワークを用いた世界大会の緊急告知
優勝者に贈られる名誉と”報酬”…


人々はこのゲームによって、
陰謀が蠢く熾烈な戦いの渦へと
巻き込まれて行く事になる―――

 

【登場人物】

●アサヒ/不問
サウスプラントに移住してきた16歳
宇宙飛行士を目指し勉学に励んでいたが
重要な国家資格試験に落ちてしまい、
気晴らしにクロスオーバーを始める
失踪した両親がメカニックだった事もあり
機械イジリに多少の心得がある
イメージカラーはレッド
一人称は「オレ」・二人称は「オマエ」

▲シノブ/不問
イーストプラント出身の16歳
成績優秀で眉目秀麗
世界模試ではある科目を除き1位の実力を持つ
家庭環境で唯一許されているクロスオーバーを
ストレス発散の捌け口にしている
イメージカラーはブルー
一人称は「ワタシ」・二人称は「アナタ」

■イブキ/不問
ノースプラント出身の16歳
アサヒのクラスメイトで謎の多い人物
クロスオーバーの実力はトップレベル
後方支援や全体指揮を主に担当する
何事も一度考えてから発言する癖がある
イメージカラーはグリーン
一人称は「ボク」・二人称は「キミ」

――――――――――――――


【基本ルール】
プレイヤーは仮想空間でロボットを操り、
最大5対5でチーム分けされた
攻撃側と防衛側拠点から
フィールド上の二か所に設置されている
α地点、β地点のどちらかを
制限時間までに爆破・防衛するか
敵対勢力を全滅させれば勝利となる

・ラウンド制
・3試合2ラウンド先取
・一試合の制限時間は10分間
・爆弾の起爆時間は300秒
・爆弾設置時間は10秒
・爆弾解除時間は5秒
・支給弾薬は9マガジン

・リスポーンはできない


――――――――――――――

【各機体の簡易説明】
※機体全高約6m

・二脚タイプ(強襲型)
連射式武器+多目的ブースト
※無反動ロケットを装着可能

・獣脚タイプ(遊撃型)
近接格闘攻撃+光学迷彩
※広範囲ジャミング機能搭載

・多脚タイプ(火力型)
超遠距離狙撃+壁面走破
※通電させ磁場を形成

・戦車タイプ(耐久型)
爆破兵器+対物重装甲
※超信地旋回による高速転回

・車両タイプ(支援型)
戦術ターレット+修理機構
※大口径ショットガンを装備

――――――――――――――

【VRコントローラー設定
右手にスティックボタンとA・Bキー
裏側にR1ボタン・R2トリガーボタン
持ち手の部分にR3グリップボタン
そしてメニューボタン

左手にスティックボタンとC・Dキー
裏側にL1ボタン・L2トリガーボタン
持ち手の部分にL3グリップボタン
そしてキーボードボタン



スカイ・スフィア 中央コロニー噴水前

●アサヒ:
(М)『周囲の音が掻き消えて、
辺りの景色が白んで見えた
行き交う人々、噴水の流れる水、
鳥達が飛び立つ姿…それらが全て
スローモーションのように感じられた』

●アサヒ:
「…嘘…だろ…」

●アサヒ:
(М)『やがて、
置き去りにされた時が動き出すと同時に、
その呟きだけが口から零れた
目の前にあるのは半透明な板…もとい
合格者が掲載された3Dモノリス
手元の端末に表示されている番号は”ない”』

●アサヒ:
「オレが…不合格…?」

●アサヒ:
(М)『オレ、こと”アサヒ”はまるで
この世の全てが終わりのような衝撃を受け、
ただその場に立ち尽くしていた―――』


【場面転換】中央コロニー 交流広場
広場の一角
木漏れ日が降り注ぐ共有ベンチに座り
大きなため息をつくアサヒ

●アサヒ:
「ハァ…何もかも我慢して、
めちゃくちゃ勉強したのになぁ…
オレの”夢”への第一歩が…トホホ
こうなったら思いっきり羽目を外してやるぅ
甘いデザート食いまくって―――ん?
”アレ”は…」

広場の電子掲示板に大々的に表示される
スカイ・スフィアで大人気の”とあるゲーム”
その鮮烈なPVが流れている

●アサヒ:
「”クロス・オーバー”…?
へぇ~オンラインゲームか~
ゲームなんて全然してこなかったからなぁ…
毎日勉強とかトレーニングとか、
機械イジリばっかだったし…
この際、初体験と行きますか
よ~っし!遊びまくるぞ~!!」

沈んだ気持ちを跳ね除けるように
アサヒは叫んだ


【場面転換】ゲームタワー ブース内
コロニー最大のゲームセンター
”最後の楽園(ラスト・エデン)”
昼間だというのに薄暗く、
どこか怪しげな雰囲気を持つ巨大な館内は
大勢の人で賑わっていた
足音はカーペットの床に消え、かわりに
音楽や効果音が騒々しい程鳴り響き
壁や天井からぶら下がるネオンが輝いている

●アサヒ:
「ここが…ラストエデンかぁ~!
くぅ~ワクワクするぅ~!
クロス・オーバーはっと…あ!
”あそこ”かな?」

ひときわ大きいモニターに映し出された
見覚えのあるタイトル
駆け寄ると、その下では
人だかりができていた

●アサヒ:
「すみません!ちょっと通りま~すっ!
通ります!ごめんなさい!っとと、
今誰かの足踏んだかも…ゴメンね!?
ホントゴメン!ん~っしょっ
…ふぅ、なんとか抜けた…あれ?」

謝りつつ観客の最前列へ割り込むアサヒ
するとプレイヤー達の顔がハッキリ見え、
その内の1人に見覚えがあった

●アサヒ:
「”アイツ”は確か…クラスメイトの…」

VR機材を装着し、
リクライニングシートのような
ゲーミングチェアに座っている
”その人物”と目が合う

■イブキ:
「…キミ、近い」

●アサヒ:
「んぇ?オレ?」

■イブキ:
「…危ないから、少し離れてて」

●アサヒ:
「あ、あぁ…悪い…」

■イブキ:
「…観たいなら、そっち」

画面が見やすい場所を指さす

●アサヒ:
「見ても良いのか!?」

■イブキ:
「…はじまる」

●アサヒ:
「おぉ~…」

観客が沸き立ち、
大画面で激しい戦闘が始まる
クラスメイトが操作する多脚機体が
超遠距離からの狙撃で相手を破壊していく

●アサヒ:
「すっげぇ~
あんな距離から一撃で潰してる?
…いや…違う
一撃なのは交戦中の敵だけ…
他は足を狙って機動力を削いでるんだ
しかも、
豆粒のような小さい敵すら見逃さない…
洞察力が優れている証拠だ」

いつの間にか集中し、
真剣な目をするアサヒ
プレイをしているクラスメイトに
賞賛の声を投げかける

●アサヒ:
「強いな、オマエ」

■イブキ:
「…当然」

最後の弾丸が、敵機体を捕らえる
ゲームセットと共に、
会場は歓声で盛り上がる

●アサヒ:
「なぁ」

VR機材を外し、席を立つクラスメイト

■イブキ:
「…なに?」

●アサヒ:
「このゲーム、長いの?」

■イブキ:
「…それなり」

●アサヒ:
「へぇ~どうりで」

■イブキ:
「…キミも?」

●アサヒ:
「オレさ、今日が初めてなんだ」

■イブキ:
「…そう」

●アサヒ:
「だからさ?どうせなら、
顔見知りに教えて貰いたいなぁ~って―――」

■イブキ:
「…顔見知り?」

●アサヒ:
「同じクラスじゃないか!
クラスメイトのア・サ・ヒ!
オマエは~…えっと」

■イブキ:
「…”イブキ”」

●アサヒ:
「そうイブキだっ!
人の名前覚えるの苦手なんだよな…
でも、顔は知ってた!」

■イブキ:
「…本当に?」

●アサヒ:
「ホントホント!だから教えて?」

■イブキ:
「…条件がある」

●アサヒ:
「なになに?できる事なら何でもするぜ!」

■イブキ:
「…飲み物、奢(おご)って」

●アサヒ:
(М)『したたかな奴だと思った
それからオレは近くにあった
ドリンクサーバーで、好物だという
グリーンティフラッペを注文してやり、
なんとかクロス・オーバーの指南役を
引き受けて貰えるように漕ぎつけた
その後、イブキに案内され
”初心者専用ブース”へとやって来た』

■イブキ:
「標的接近、2時方向、警戒…」

●アサヒ:
「あぃよっ…と!よし、倒した!」

■イブキ:
「…基本操作はそんな感じ
次は、実戦」

●アサヒ:
「もう見なくていいのか?」

■イブキ:
「…筋が良かった」

●アサヒ:
「ふーん?でも、不思議と馴染んだな
あんまり違和感も無かったし」

■イブキ:
「…”どの子”が良かった?」

●アサヒ:
「機体の事か?
ん-…やっぱり初めに使った”二脚”かな?
変な感想だけど、懐かしく感じた」

■イブキ:
「…懐かしい?」

●アサヒ:
「いや?なんとなくな?
どっかで触った事があるような…
ま、気にしないでくれ」

■イブキ:
「…良い選択だと思う」

●アサヒ:
「ホントか?」

■イブキ:
「…”強襲”型は、万能タイプ」

●アサヒ:
「強襲型かぁ…そういや、
イブキが使ってたのは多脚だったよな?
選択できなかったけど、アレは?」

■イブキ:
「…あの子は”火力”型
初心者サーバーでは使えない」

●アサヒ:
「そうなのか?あー…けど
なんとなく、わかる」

■イブキ:
「…レベルが上がれば、使える」

●アサヒ:
「ん~やめとくよ
あんな繊細な機体、
オレが乗ると疲れそうだ」

■イブキ:
「…好みは人それぞれ」

●アサヒ:
「だな!よし、一緒にやろう!」

■イブキ:
「ボクも…?」

●アサヒ:
「おう!あ…でも火力型使えないんだっけか
なんか他に使いたいタイプあったりする…?」

■イブキ:
「…ある」

●アサヒ:
「おお!なんだ?」

■イブキ:
「…”耐久”型」

●アサヒ:
「耐久?盾って事か?」

■イブキ:
「そう、調整中…」

●アサヒ:
「じゃあそれを使ってくれ、
イブキが居てくれたら心強い」

■イブキ:
「…キミがいいなら」

●アサヒ:
「決まりだな
じゃあオンライン対戦を―――お?」

アサヒを手でそっと静止するイブキ

■イブキ:
「…まずはNPC戦」

●アサヒ:
「えぬ・ぴー・しー?
AI戦闘か?」

■イブキ:
「…そう、コンピュータを相手にする
練習にはもってこい」

●アサヒ:
「またコンピュータか…
でもま、ルール確認もしなきゃだもんな~…」

▲シノブ:
「すみません、少しよろしいでしょうか?」

●アサヒ:
「ん?誰だ?」

二人の背後から知らない人物が話しかけてきた

▲シノブ:
「そちらの方はもしかして先程、
あちらで火力型を使われていた方でしょうか」

●アサヒ:
「イブキの事か?」

■イブキ:
「…たぶん、そう」

●アサヒ:
「知り合いか?」

■イブキ:
「…知らない…何か用?」

▲シノブ:
「とても素晴らしい立ち回りでしたので
良ければ一度手合わせ頂けたらなと…
幸い、こちらでプレイをされるなら
勝敗レートを気にせず済みますから…」

●アサヒ:
「人気者だな~さすがイブキ」

■イブキ:
「…先客がいるから、また今度」

●アサヒ:
「え?いいのか?」

■イブキ:
「…先に約束してたのは、キミ」

 
●アサヒ:
「そうだけど―――」

▲シノブ:
「そうですか…とても残念です…
こんな機会、もう無いと思ったので…」


その残念そうな姿を自分に重ねるアサヒ

●アサヒ:
「むぅ~…じゃあこうしようぜ?

AIを含めた”ビギナーズルール”
オレ達がペアでチームを組む
そっちはNPCと組んでくれ
イブキは火力型がメインなんだけど
こっちじゃ使えないんだ
それくらいのハンデがあっても良いだろ?」

▲シノブ:
「本当ですか?」

■イブキ:
「…いいの?」

●アサヒ:
「どうせ一試合したら終わりだろ、
気楽に行こうぜ?」

■イブキ:
「…でも」

●アサヒ:
「いいのいいの!」

■イブキ:
「…わかった」

▲シノブ:
「ありがとうございます!
ワタシは反対側で準備しておきますね?」

そういうと頭を下げ、
笑顔で反対側へと消える

●アサヒ:
「ま、仮にオレがやられたとしても
対人戦の良い練習にはなるしな?」

腰に手を当てて呟くアサヒ

■イブキ:
「…死なせない」

●アサヒ:
「え?」

イブキはこちらを見ずに、
どこか遠い目をして呟いた

■イブキ:
「…ボクが、守るから」

その横顔に少し驚きつつも、
安心した表情で答えるアサヒ

●アサヒ:
「おう!背中は、任せたぜ?」

今度は目を合わせ、伝えるイブキ

■イブキ:
「…了解」


【場面転換】ゲーム内 ガレージ

●アサヒ:
(M)『クロス・オーバー…
それは、スカイ・スフィアで
最も人気のあるオンラインゲーム
最大5対5のチームバトルが可能
互いのプレイヤーはそれぞれ、
攻撃側、防衛側に分かれ
制限時間までに相手チームを全滅させるか、
アルファ地点もしくはベータ地点の
どちらかを”爆破”または
”防衛”する事で勝敗が決まる
無数に存在する武器やパーツの中から
自分だけの”ロボット”を組み上げて操り、
戦場を縦横無尽に駆け巡る
硝煙(しょうえん)と鉄屑に塗(まみ)れた
戦士達の世界である―――』

インカムにイブキの通信が入る

■イブキ:
「…準備できた?」

●アサヒ:
「ん~」

■イブキ:
「…どうしたの?」

●アサヒ:
「いや…”どっち”にすべきかってな?」

■イブキ:
「…組み合わせ?」

●アサヒ:
「あぁ…
相手が何を使ってくるか解らない以上、
安易な考えで出撃はできない…
強襲型に装備されたライフルに合わせるなら
持続力に長(た)けたマシンガンか、
速度と貫通力に優れたレーザーか…」

■イブキ:
「…したい事を、思い浮かべて」

●アサヒ:
「したい事?そうだな~
オレは一撃離脱よりは…
正面から撃ち合いたいな
よし…マシンガンだ!」

■イブキ:
「…好きな事が、一番」

●アサヒ:
「だな!ありがとなイブキ」

■イブキ:
「…(頷く)」

●アサヒ:
「あとはここをこうしてっと…
さぁ、出撃だ!」


【場面転換】ゲーム内 市街地フィールド

●アサヒ:
「待たせたな!」

■イブキ:
「…その機体」

●アサヒ:
「おう!カッコいいだろ~?
真紅にペイントしてみた!」

■イブキ:
「…派手」

●アサヒ:
「あ…やっぱダメか?」

■イブキ:
「…陽動には最適」

●アサヒ:
「そ、そっか!
よーっし、やるぞ!」

■イブキ:
「…その調子」

●アサヒ:
「イブキの機体は…
そりゃあもしかして…”戦車”か?」

大型のキャタピラに搭載された
巨大な砲塔がギラリと光る

■イブキ:
「…そう、主力戦車タイプ」

●アサヒ:
「すげえ砲塔だな?」

■イブキ:
「…火力特化モデル…らしい」

●アサヒ:
「らしい?」

■イブキ:
「…”試乗”を依頼されてる」

●アサヒ:
「そうなんだ?友達か?」

■イブキ:
「…そんなとこ」

●アサヒ:
「へ~見るからに強そうだなぁ」

■イブキ:
「…くる」

●アサヒ:
「っと!おいでなすったか!」

▲シノブ:
「まだこんな所にいらしたのですね?
てっきり、そちらから近いベータ地点を
防衛しているとばかり…」

動物のようなシルエットを持つ機体が
およそ1km程先の橋の上から
こちらの様子を見ている

●アサヒ:
「オープン回線…?
それにアレは…”獣脚”…か?」

■イブキ:
「…”何か”あるかも」

●アサヒ:
「何かって?」

■イブキ:
「…”遊撃”型は
奇襲に特化した機体」

●アサヒ:
「なるほど、正面から来たって事は
余程の自信家か…あるいは―――」

▲シノブ:
「さぁ?どちらでしょう?」

■イブキ:
「…気を付けて」

●アサヒ:
「とはいえ、牽制しようにも
こっからじゃ何もできねぇな…
どうする?」

■イブキ:
「…大丈夫」

●アサヒ:
「イブキ?」

■イブキ:
「風速約3m、距離926m前方
仰角(ぎょうかく)修正…」

砲塔が遠方のターゲットを捉える

●アサヒ:
「もしかしてオマエ―――」

■イブキ:
「ファイア」

轟音と共に発射された砲弾が
勢いよく標的目掛けて飛んでいく

●アサヒ:
「ッ!マジで撃った!?」

▲シノブ:
「まさか…あの距離から」

砲弾は橋の真ん中に着弾、
強烈な衝撃波を伴い、爆発

●アサヒ:
「うぉお…すんげぇ…
それになんつー威力だ…
ホントに耐久型なのか…?
あんなのを喰らったらさすがに…」

■イブキ:
「…はずした」

●アサヒ:
「今の爆発でか?」

■イブキ:
「…直撃はしていない
想定よりも弾速が遅かった」

●アサヒ:
「そ、そうか…はは…」

▲シノブ:
「驚きましたよ~
本当にあの距離からここまで
耐久型の砲撃を届かせるなんて…
さすが…イブキさんですね?」

倒壊した橋が巻き上げた煙の中から
獣脚のロボットが跳び出し
こちらを挑発するかのように身を震わす

●アサヒ:
「ピンピンしてやがる…
いや、それよりも
やっぱイブキの事を知って…?」

■イブキ:
「…要警戒」

▲シノブ:
「次はこちらから参ります」

しなやかな動きでこちらへと走り出す

●アサヒ:
「気を付けろ!イブキ!!」

■イブキ:
「…問題ない」

●アサヒ:
「い、イブキ?」

■イブキ:
「…次は、当てる」

▲シノブ:
「期待してますよ?」

すると、獣脚ロボットの姿が
忽然と目の前から消える

●アサヒ:
「なっ消えた…?どこだ!?」

■イブキ:
「…よく見て」

●アサヒ:
「ん!?…なんだ?
空間が一部分だけ歪んでいる?」

■イブキ:
「…”影”を狙って」

●アサヒ:
「影…そうか!うぉおおお!!」

地面に落ちた影をがむしゃらに撃つアサヒ
立ち上る砂埃が光学迷彩に干渉し、
その輪郭が露(あらわ)になる

▲シノブ:
「チィッ…光学迷彩の弱点を…」

●アサヒ:
「今だイブキ!」

▲シノブ:
「しまっ―――」

■イブキ:
「おしまい」

●アサヒ:
(M)『イブキの放った砲弾が直撃し、
爆発と共に相手の機体を吹き飛ばす
構成していたパーツの破片が
周囲に散らばった』

■イブキ:
「…」

立ち上る煙と炎を見つめるイブキ
離れていたアサヒが傍に近寄る

●アサヒ:
「す…すげぇ…
見えねぇ敵をあっさりと…
やったな!あとは…ん?」

返事がないイブキを訝しむアサヒ

●アサヒ:
「イブキ?」

■イブキ:
「…おかしい」

●アサヒ:
「おかしい?なにがだ?」

■イブキ:
「…簡単過ぎる」

●アサヒ:
「そ、そうか?
でも、それはイブキが―――」

■イブキ:
「…ッ!」

急に戦車をぶつけるイブキ
その衝撃で横転するアサヒ

●アサヒ:
「ちょ!イブキ!?
スキンシップにしちゃ大げさだぞ!?」

■イブキ:
「…ゴメン」

●アサヒ:
「イ…ブキ…?」

見ると、イブキの操る戦車の
キャタピラ部分が、
高熱の刃で切り裂かれたかのように
大きく損壊している

■イブキ:
「…指示が、遅れた」

▲シノブ:
「咄嗟(とっさ)に仲間を助けるなんて
…お優しいんですね?」

戦車の背面から、
黒い獣が顔を覗かせた
それは紛れもなく、
先ほど吹き飛んだはずの機体

●アサヒ:
「オマエ…!さっき確かに!?」

■イブキ:
「…迂闊(うかつ)だった」

●アサヒ:
「え?」

■イブキ:
「…自分の”スキン”を、
NPCにかぶせて偽装してた」

●アサヒ:
「そうか…オープン回線だったのも、
NPCという事を隠蔽(いんぺい)するため…」

▲シノブ:
「ご明察ですね…その通りですよ?
もう少し見ていたかったのですが…
そちらの方が余りに無防備でしたので、つい」

●アサヒ:
「くっ…イブキ…
オレが油断したせいで…すまねぇ」

■イブキ:
「…大丈夫
履帯(りたい)が持っていかれただけ」

▲シノブ:
「さすが耐久型ですね?
…けれどアナタが動けないなら、
残るはそちらの素人さんのみ…
こちらとしては勝ったも同然です」

●アサヒ:
「やるってんなら相手になるぜ!
かかってこいよ!!」

▲シノブ:
「熱いですね~?
ですが、お断りします」

●アサヒ:
「な、なに?」

▲シノブ:
「ここでアナタをいたぶっても
どうせすぐ終わってしまいますし
楽しくありません」

●アサヒ:
「…なんだと?」

▲シノブ:
「せっかくですから、
ワタシは攻撃側として
そちらの拠点を爆破させて頂きます
アルファ地点でお待ちしていますね?」

立ち去ろうと背を向けるシノブ

●アサヒ:
「逃げるってのか!戦えよ!!」

▲シノブ:
「はぁ…ルールを確認するのが、
本来の目的なんですよね?
そちらにとっても、
悪くない提案だと思ったんですけど?」

●アサヒ:
「それとこれとは―――」

■イブキ:
「良い…」

●アサヒ:
「なっ…イブキ?」

■イブキ:
「…行かせて」

▲シノブ:
「イブキさんは冷静で助かります
まぁ、たかがゲームですから
それでは」

そう言い残し、2人を残して
シノブはビルの屋上へと飛び移り、
姿を消した

●アサヒ:
「アイツ!!」

■イブキ:
「…落ち着いて」

●アサヒ:
「けど!」

■イブキ:
「…撃ってたら、倒す前に
間合いを詰められておわり」

●アサヒ:
「オレには…勝てないってのかよ」

■イブキ:
「…これは、”チャンス”」

●アサヒ:
「チャンス?」

■イブキ:
「…相手は、油断してる」

●アサヒ:
「でも…それはオレが初心者で
弱いからだろ…」

■イブキ:
「確かに、キミは初心者」

●アサヒ:
「ぐ…」

■イブキ:
「でも、違う」

●アサヒ:
「…ぇ?」

■イブキ:
「キミは、強い」

●アサヒ:
「オレが…強い?」

■イブキ:
「そう、だから…大丈夫」

イブキの声は落ち着いていて
けど、どこかに感じる想い

■イブキ:
「ボクに構わず、行って」

その声だけで伝わる、”気持ち”

●アサヒ:
「…あぁ、わかった」

そう答える事しかできなかった

■イブキ:
「…うん」

ただ、
言わずにはいられなかった

●アサヒ:
「イブキ」

■イブキ:
「…?」

●アサヒ:
「仇は、必ずとってやる」

その言葉を、言わずには

■イブキ:
「…頑張って」

背を向け、去って行くアサヒ
機体がビルの向こうへと消えた後
自分の機体に目を落とすイブキ

■イブキ:
「…無理させて、ごめんね」

コックピット内の機材を撫ぜ
そう呟いた


【場面転換】アルファ地点 拠点付近
機体を操り、駆け抜けるアサヒ
エネルギーを気にしつつ、
ブーストを適度に吹かす

●アサヒ:
「アイツ…どこ行ったんだ…?」

周囲を警戒するが、
それらしき影すら見えない
目に映るのは崩壊した街の景色

●アサヒ:
「にしても、足場が悪いな…
あちこち瓦礫(がれき)の山だ…
二脚だと移動しずらい…」

▲シノブ:
「やっと来ましたか~
待ちくたびれましたよ?」

●アサヒ:
「ッ!どこだ!?」

▲シノブ:
「ここですよ~?」

上を見上げると、シノブの駆る獣脚が
高層ビルの屋上から見下ろしていた

●アサヒ:
「あんな所に…!
降りて来い!」

▲シノブ:
「はぁ?何を言い出すかと思えば…
アナタ、バカなんですか?
ワタシは敵ですよ?来いと言われて、
行く訳無いじゃないですか」

●アサヒ:
「んだとぉ…!」

▲シノブ:
「アナタの方こそ
登って来れば良いじゃないですか?
あぁ…もしかして、
それすら”出来ない”とか?」

●アサヒ:
「じょ…上等だ…!
ちょっと待ってろ!?
今から行くからな!!」

ブーストを吹かしながら跳躍し
建物の壁面にまるで
食らいつくようによじ登る

▲シノブ:
「こちらですよ~」

アサヒとは対照的に
地面を、壁を、縦横無尽に翻弄し
猫の様に移動するシノブ

●アサヒ:
「待ちやがれ!」

▲シノブ:
「そんな速度で、
ワタシを捉えられるとでも?」

●アサヒ:
「く…機体が、重い…!」

ブーストを吹かし近づくが、
漂うような挙動に振り回される

▲シノブ:
「まるでダメですね…
勢いは口先だけですか?」

●アサヒ:
「まだ感覚が掴めて無いだけだ!
これから―――」

▲シノブ:
「アナタ、甘いんですよ
自分勝手な期待をして、
”理想”ばかりを追い求める…
できるはずも無いのに」

●アサヒ:
「…理想を求めて何が悪い」

▲シノブ:
「”夢想”の間違いでしょ?
そんな夢物語なんて、
現実には存在しません!」

●アサヒ:
「無ければ作ればいいだろ…!
他人をバカにする奴に、
神も仏も!微笑んだりはしない!!」

▲シノブ:
「…!
知った風な口をッ!!」

壁を蹴り、襲い掛かるシノブ
鋭い爪がアサヒの機体に食い込む

●アサヒ:
「ぐぁああッ!」

叩き落され、ビルに突っ込むアサヒ

▲シノブ:
「…柄にもなく、熱くなってしまいました
アナタは、そこで埋まっていて下さい
ワタシはアルファを爆破してきます」

●アサヒ:
「ぐ…うぅ…ッ!」

▲シノブ:
「思い知れば良いんですよ…
自分の愚かさと、無力さを」

●アサヒ:
「チク…ショウ…」

目の前が暗くなるアサヒ
暫くすると、何処からか
”声”が聞こえてくる…

■イブキ:
「…サヒ」

●アサヒ:
(М)『呼んでいる…?』

■イブキ:
「…アサヒ」

●アサヒ:
(М)『誰かが、オレを…
この声は…一体―――』

■イブキ:
「…起きて」

●アサヒ:
「ん…イブキ…?」

■イブキ:
「…起きた?」

●アサヒ:
「あ、あぁ…悪ぃ」

■イブキ:
「…大丈夫?」

軽い脳震盪を起こしたらしい
後頭部を擦る

●アサヒ:
(М)『どれ程眠っていたのだろう
仇をとると言いつつ何もできず、
逆に心配される自分が不甲斐ない』

■イブキ:
「…動ける?」

●アサヒ:
「心配すんな
ちょっと…躓(つまず)いた」

■イブキ:
「…そう」

●アサヒ:
「どうも調子狂うぜ…な~んかこう、
キビキビ動けねぇんだよなぁ…
ったく情けねぇ」

■イブキ:
「…”ブーストアシスト”のせい?」

●アサヒ:
「ん?なんだソレ?」

■イブキ:
「…搭載されているシステムの”1つ”
機体制御に自動でアシストを加える」

●アサヒ:
「お…コレか?」

見上げるとスイッチがあり
作動しているように青く光っている

●アサヒ:
「切れるのか?」

■イブキ:
「…切れる
けど、操作難度が跳ね上がる」

●アサヒ:
「オフっと」

■イブキ:
「…本気?」

●アサヒ:
「”為(な)せば成(な)る”さ
知らないか?」

■イブキ:
「…?」

●アサヒ:
「へへっ…ま、見てなって
きっと面白い事に…ん?」

画面上部、
謎の赤いタイマーが起動する

●アサヒ:
「急にどうしたんだ?」

■イブキ:
「…起爆時間」

●アサヒ:
「って事は…そうか爆弾!」

タイマーは240秒を切った

■イブキ:
「…時間がない」

●アサヒ:
「急がねぇと!のわッ!!」

つんのめるアサヒ
機体が前のめりにバランスを崩す

■イブキ:
「…どうしたの?」

●アサヒ:
「いや、なんでもねぇ
さっき設定をいじったから
どっかでエラーでも吐いてんだろ」

■イブキ:
「…やっぱり、元に戻す?」

●アサヒ:
「時間がねぇんだ…
むしろこっちの方が安心する」

■イブキ:
「…安心?」

●アサヒ:
「ああ…これだけ”似て”たらな…」

▲シノブ:
「まだ戦うつもりですか…?」

ビルの屋上からこちらを見下ろし
威嚇するように牙を見せるシノブの機体

●アサヒ:
「オマエ…!戻って来やがったのか!」

▲シノブ:
「いい加減に諦めて下さい
爆弾は起動し、
マップも把握できず、
頼れる味方すらいない…
どうやっても勝つ見込みはありませんよ?」

●アサヒ:
「それは違うぜ?」

▲シノブ:
「え?」

■イブキ:
「…1人じゃない」

突如、空から砲弾が着弾
辺りが火に包まれる

▲シノブ:
「な、コレは…”爆撃”?
まさかあの位置から!?」

●アサヒ:
「助かったぜ!イブキ!」

搭載されている特殊装備、
”オーバーブースト”を使用し
直線を一気に駆け抜ける

■イブキ:
「…前方の曲がり角を抜ければ拠点
でもその機体じゃ、もう…」

●アサヒ:
「為せば成る!」

■イブキ:
「…どうやって?」

●アサヒ:
「このまま内部データを
書き換える!」

■イブキ:
「…拠点の爆発まで1分しかない
失敗したら―――」

●アサヒ:
「そんな事わかってる!!」

■イブキ:
「…”できる”の?」

●アサヒ:
「できるかどうかじゃない!
”やる”んだ!!
データメモリを経由して、
各種パラメーターとBCIを再設定
スラスター出力及び、
バーニア可動域変更
エリアルホバーパワーバランス調整
フィードフォワードネットワーク再起動
システムオンライン…
ブースター点火、最大出力ッ!
曲・が・れぇぇぇええええええ!!」

一筋の赤い光の線を描いて
火花を散らしながら
機体がカーブを突破する

■イブキ:
「…赤い…光」

●アサヒ:
「どうだ!」

■イブキ:
「…すごい、今までに見たことがない」

▲シノブ:
「あの速度で曲がり切るなんて…
けれど、これで!」

建物の上から獲物に跳びかかるシノブ

●アサヒ:
「させるかぁあああ!!」

強烈なブーストで前方へと飛び上がり、
その慣性を持ったまま左、前、右、前の
連続したブーストでシノブの攻撃を躱す
更にブーストを用いた高速旋回で背後をとり、
そしてすかさず、
後方へのブーストで距離を空ける
勢い良く着地した機体の重量で
アスファルトとコンクリートが粉々に砕けた

▲シノブ:
「まさか!躱(かわ)された!?」

■イブキ:
「あの機動は…」

●アサヒ:
「全砲門…展開!」

停止したアサヒの機体の銃口が
攻撃動作を終えたシノブの機体を捉える

▲シノブ:
「そんな―――」

●アサヒ:
「発っ射ぁあああ!!」

着地後の硬直に合わせた一斉射撃
回避も間に合わず全弾が命中し、
シノブの機体パーツが四散する

▲シノブ:
「うぁあああ!」

銃口から射撃の余韻を残す硝煙が立ち昇り
相手の完全停止を告げる

●アサヒ:
「…イブキ」

銃を下ろすアサヒ

●アサヒ:
「仇は、とったぜ?」

■イブキ:
「…ありがとう」

警告音が鳴り響く

●アサヒ:
「あ…いっけね!爆弾解除!!」

■イブキ:
「…間に合う?」

●アサヒ:
「為せば成るだ!
いっけぇえええ!!」

再びオーバーブースターを起動し、
そこに連続ブーストを織り交ぜた高速移動
音速を超える程の衝撃波が発生し、
周囲の建物の窓ガラスが割れる

■イブキ:
「…解除コードは〇〇〇〇(※日付4桁)」

●アサヒ:
「わかったイブキ!
間に合ぇえええええ!!」

操作パネルから解除コードを入力
タイムリミットを示すタイマーが停止し
周囲の警報が鳴りやむ

●アサヒ:
「(息切れ)と、止まった?」

■イブキ:
「…止まった」

見上げれば画面にWINの文字と
盛大に流れるファンファーレ

●アサヒ:
「やったぜ!オレ達の勝ちだ!!
バンザ~イ!!」

■イブキ:
「…お疲れ様、アサヒ」

●アサヒ:
「お疲れイブキ!
…って今!」

■イブキ:
「…どうかした?」

●アサヒ:
「”また”…呼んでくれたな!」

■イブキ:
「…うん」

●アサヒ:
「えへへ…ありがとな!!」

■イブキ:
「(小声)…本当に、良かった」

●アサヒ:
「ん?なんか言ったか?」

■イブキ:
「…なんでもない」

●アサヒ:
「ま、いいや!ロビーに戻ろうぜ!」

■イブキ:
「…うん、帰ろう」

そう言いながら機体を擦る
口元に少しの笑みを浮かべて


【場面転換】 ビギナーロビーブース
筐体前で話すアサヒとイブキ

●アサヒ:
「いやあ~面白れぇな!」

■イブキ:
「…気に入った?」

●アサヒ:
「ああ!最高だぜクロス・オーバー!
武器も色々使ってみたいな!」

■イブキ:
「…沢山ある」

●アサヒ:
「そっかあ~そりゃあワクワクするな!」

■イブキ:
「…ん」

●アサヒ:
「ん?どうしたイブキ―――アイツ…」

顔を上げると、
少しムッとした表情のシノブが
腕を組んで2人をジッと見ている

▲シノブ:
「…」

●アサヒ:
「まだなんか用か?」

▲シノブ:
「”グッド・ゲーム”」

●アサヒ:
「え?」

■イブキ:
「…試合後の”挨拶”
楽しかったとかの意味」

▲シノブ:
「そんな事も知らないんです?
まったく…頭良いんだかバカなんだか」

●アサヒ:
「な!バカとはなんだバカとは!!」

▲シノブ:
「ばぁ~か」

●アサヒ:
「コイツ!?」

▲シノブ:
「冗談です、本当に良い試合でしたよ」

組んでいた腕を解き、
アサヒに向き直って
握手を求めるシノブ

●アサヒ:
「お…おお
そっちこそ、すげー強かったぜ!
ありがとな!グッド・ゲーム!!」

握手に応じるアサヒ

●アサヒ:
「オレは、アサヒだ」

▲シノブ:
「ワタシは、シノブです」

握手を交わし、互いを称え合う

■イブキ:
「…2人とも、グッド・ゲーム」

それを見て微笑むイブキ

▲シノブ:
「ええ、イブキさんも
砲撃による偏差射撃…お見事でした」

●アサヒ:
「そういや…
なんでイブキの事知ってたんだ?
初対面だったんだろ?」

■イブキ:
「…初対面、のはず」

▲シノブ:
「そうですね、
イブキさんは知らないでしょう…」

●アサヒ:
「どういう事だ?」

▲シノブ:
「今年の”世界模試”、覚えていますか?」

●アサヒ:
「世界模試ぃ~?なんだそりゃ?」

■イブキ:
「…年に一度の学生行事
年初めにあって、先日結果が出た」

▲シノブ:
「ワタシはその試験で”ある科目”以外、
1番の成績だったんです」

●アサヒ:
「天才かよ…ん?
ある科目以外?それって―――」

■イブキ:
「…物理演算試験」

●アサヒ:
「ははぁ~ん?つまり…」

▲シノブ:
「ワタシに唯一黒星を付けた相手…
どんな方なのか、気になっていたんです
まさか、同じゲームをプレイしているとは
思っていませんでしたけどね」

●アサヒ:
「なるほど、納得」

▲シノブ:
「結果としては負けてしまいましたが、
後悔はしていません
一矢報いる事もできましたし、ね?」

■イブキ:
「…強かった」

▲シノブ:
「ありがとうございます
素直に受け取りますよ」

●アサヒ:
「2人ともすげぇなぁ~
試験かぁ…
嫌な事思い出しちまったぜ…」

■イブキ:
「…嫌な事?」

▲シノブ:
「アナタも試験を受けていたんですか?
でも、世界模試ではないんですよね?」

●アサヒ:
「ソレとは別だ…
ま、ダメだったんだけどさ」

▲シノブ:
「世界模試と同じ時期に…?
何の試験か、お伺いしても?」

■イブキ:
「…ボクも知りたい」

●アサヒ:
「う、うーん
笑うなよ…?」

■イブキ:
「笑わない」

▲シノブ:
「笑いませんよ」

●アサヒ:
「宇宙飛行士の…
”国家資格試験”だ」

■イブキ:
「…宇宙」

▲シノブ:
「飛行士…?」

●アサヒ:
「だ、だから…
他の事してる暇無かったんだよ!
システム周りの勉強とか…体づくりとか…
今回は上手くいかなかったけど、
また来年頑張るさ!」

▲シノブ:
「なれるかもしれませんよ?
来年とは言わず、”今年中”に」

■イブキ:
「…アサヒならできるかも」

●アサヒ:
「え?」

▲シノブ:
「アナタは知らないみたいですけど
クロス・オーバーでは今年
”世界大会”があるんです
勝者には栄光と名誉、
そして報酬が与えられます
それも…”特別な報酬”がね?」

●アサヒ:
「ソレって…まさか」

■イブキ:
「…政府公認の、国家資格」

●アサヒ:
「おいおいマジか!ホントに!?
すげぇ…凄すぎるぜ!!
このメンバーでなら、絶対やれる!」

■イブキ:
「…うん」

▲シノブ:
「ぇ…ワタシも…?
いいんですか?」

●アサヒ:
「水クセェな!仲間だろ?」

▲シノブ:
「まったく…アナタって人は…」

少し安心したような表情のシノブ

●アサヒ:
「チームメンバーは5人必要だったな…
ソイツさえなんとかなれば」

■イブキ:
「…あとの2人は、当てがある」

●アサヒ:
「ホントかイブキ!?」

■イブキ:
「…任せて」

胸に手を当て、微笑むイブキ

●アサヒ:
「さすがだぜ!
そうと決まれば、手を出せ!!」

■イブキ:
「…?こう?」

▲シノブ:
「こうですか?」

手の甲を前に出し重ねる3人
顔を見合わせ、クスリと笑う

●アサヒ:
「よぉおおおし!やるぞ!!
目指すは、世界一だ!!!」

●▲■:
「おー!」

高らかな宣言と共に挙げた
それぞれの手の先で
流れ星が、煌めく

●アサヒ:
(М)『夕日を背にしてはじまった…
この日、この時、この場所が、
オレ達にとっての”スタートライン”―――』





Fin.

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