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I was out working for our local newspape

​コール・オブ・グリモワール

気が付くと、見知らぬ場所に居たアナタ
そこは白い霧に包まれた深い森―――

いつもと変わらない服装だが、

持っていたのは
意匠のある羽根ペンが括りつけられた

革表紙の手帳と
足元に火の灯った

オイルランタンが一個だけ…

ランタンの明かりを頼りに

レンガの敷石を進んで行くと、
辿り着いた先にあったのは古い洋館だった

重い扉を押し開け、

訪れたアナタを迎えるのは
フードを被った怪しげな人物と、

所狭しと並べられた


"魔導書"たち―――

【登場人物】


〇〇〇(アナタ自身)
白い霧に覆われた森で迷い込み、
誘われるように見つけた古い洋館を訪れる
"魔術"の才覚があるらしいのだが…
※男女不問 口調改変可 一・二人称変更可

演者様自身です 一部アドリブ有り

アル
中世風の衣装に編み上げのロングブーツ
フード付きのローブで身を包む不思議な人物
銀髪色白といった儚げな印象を持つ
表情は被ったフードのせいで口元しか窺えない
一人称は"ボク" ※性別変更可

 

 

ノック三回、木の扉をゆっくり開ける音
風が吹き込み、到る所にある蝋燭が揺れる
半分開けた扉から

ランタンと顔を出し、中を窺う


〇〇〇:

「どなたか、いらっしゃいませんか~…?」
 

声は響くが返事は無い


〇〇〇:

「こんな所に洋館があるなんて…
外に居ても何があるか分からないし、
少しの間だけでも休ませてくれたら
嬉しいけど―――」


アル:

「…やぁ」


〇〇〇:

「―――ヒャアッ!?(悲鳴可)」

背後に立っていたのは、ローブを纏った人物

被ったフードから口元と
結われた銀髪だけが覗く


〇〇〇:

「あ、あなたは…」


アル:

「ボクは―――"アル"
この館の主であり、管理人であり、

"司書(ししょ)"さ」


〇〇〇:

「わ、私の名前は―――」


アル:

「(被せて)ところで…君、迷子?」


〇〇〇:

「え…ええ」※肯定


アル:

「へぇ…おかしいな?」


〇〇〇:

「おかしい?」


アル:

「この森はね、"魔物除けの霧"が特に濃いのさ
常人であれば、狂ってしまう程にね…?
だから、普通の人間は入ってこれない」


〇〇〇:

「どういうこと?」


アル:

「この森に入るには、"魔術"が必要なのさ
てっきり、

君も"ソレ"を使って来たと思ったんだよ…
出る時にも、必要だからね」


〇〇〇:

「どうしよう…元の場所へ戻れないの?」


アル:

「フフ、帰る方法はあるさ
"魔の素質"があれば、ね?」


〇〇〇:

「わからない…」


アル:

「ふーん…それは大変だね…?
まあ久しぶりの来客だ、

ゆっくりしていくと良い
…"あの子達"も喜ぶ」


〇〇〇:

「?そういえばさっき司書って―――」


アル:

「そう、ここはただの館じゃない…
ボクにとって特別な場所、秘密の"隠れ家"さ」


館へ入っていくアル
振り返り、手を広げ、告げる


アル:

「…ようこそ、"魔導書館"へ―――」

悪戯な笑みを浮かべながら…

【場面転換】大書庫 零層
羊皮紙の香りが漂う、
蝋燭で照らされた空間、
下へ下へと続く
木製の巨大な螺旋階段の壁沿いに、
見渡す限りの"本達"…

〇〇〇:
「凄い…」

アル:
「魔に通じる"すべて"が、
此処にある…」

〇〇〇:
「こういうの憧れてた!
どれでも読んで良いの?」

アル:
「この子達も君を歓迎している、
自由に―――」

〇〇〇:
「(被せて)って全然読めない!
何これ英語じゃないの?!」

アル:
「…読めないんだ?」

〇〇〇:
「日本語じゃないのは解ってたよ?
でも…」

棚から取った本を床に置き、
手を付いて項垂れる

アル:
「不思議だね?
少なくとも"適正"はあるのに」

〇〇〇:
「うぅ…」

落ち込んでいると、アルが傍にやってきた

アル:
「可哀想だね…?」

跪いたアルが色白の手を頬に添える

〇〇〇:
「…ぇ」

アル:
「フフ…」

アルの顔が徐々に近づく

〇〇〇:
「なっ、ちょっと―――」

アル:
「大丈夫…」

目の前にはアルの赤と青の美しい瞳

〇〇〇:
「ア…ル…?」

アル:
「ボクに、任せて…」

そして、お互いの唇が触れ合いそうになり

〇〇〇:
「―――ッ!」

思わず目を瞑った―――が

アル:
「さ、もういいよ?」

〇〇〇:
「…へ?」

アル:
「どう?読めるように…なったでしょ?」

〇〇〇:
「ッ!ホントだ…読める」

先程は読めなかった
エンボス加工の白い装丁の本
そこに書かれている文字を、
今は"理解"できる

アル:
「…君には、"どんな色"が合うだろう?
書庫の子達はね…魔導のチカラによって
それぞれ違う"色"を持っているんだ
明るい色から、暗い色まで
まさに、千差万別…選り取り見取りさ」

高鳴る鼓動、本を拾い上げ、もう一度開く

アル:
「第零層…その名は、『白銀(はくぎん)』
"光"の属性を司る
主に、再生や復活、治癒を得意としている
"ある属性"に対しては、
特に効果的だね…」

〇〇〇:
「―――『無垢(むく)なる光』
"浄化"の力
それはあらゆるモノを癒し、
生命に活力を与える
悪を滅する"神聖な業(わざ)"とされているが、
これは死を拒絶する
"魔のチカラ"に他ならない
触媒(しょくばい)は…」

ページを捲る手が、止まらない
持っていた手帳を取り出し、
文章を書き留める

アル:
「おやおや…フフ」

アルはただ微笑んで、
その様子を見守っていた
 
【場面転換】大書庫 地下一層
ランタンの灯りが揺らめき、
木材の軋む音が響く
"炙られ"煤けたような床を
注意して進んで行く

アル:
「第一層…『紅蓮(ぐれん)』
"火"の属性を司る
手に収まる炎から、
一帯を消滅させる爆炎まで
火の齎(もたら)すソレは、
まるで芸術さ…
ボクはね?火を見ていると、
とても落ち着くんだ
…モノが燃える光景は儚くも、美しい
始まりであり、終わりでもあるからね…」

〇〇〇:
「赤い本が、こんなに沢山…けど
なんだかここだけ…少し、暑いかも」

アル:
「秘めたチカラにより、
熱を帯びるモノも多い…
もっとも、
此処は燃える事はないけどね…」

本を手に取る、
赤い大きな蛇の皮のような表紙
ページを捲ると、熱気が顔を撫でた

〇〇〇:
「―――『緋色の目覚め』
"憑依(ひょうい)"の力
物質に灼熱の力を宿す
炎に触れた対象は瞬く間に"融解"する
自身と宿された物質が
この炎で焼ける事はない
火とは身近であるが故に
畏(おそ)れられる存在である
触媒は…」

言いながら手帳に書き記す

アル:
「君も、気に入ってくれたら…嬉しいよ」

その声が耳に届いたかは、わからない
 
【場面転換】大書庫 地下二層
階段を下り、暑さが和らいだ頃
木の床を踏む音に、若干の"砂"が混じる

アル:
「第二層…『大地(だいち)』
"地"の属性を司る
地表を割ったり、隆起(りゅうき)させたり、
それを使って押し潰したりね
相手を生き埋めなんて事もできたかな…」

〇〇〇:
「ふ~ん?あ、この本良さそう」

棚に手を伸ばし本を掴むが、
なかなか抜けない

〇〇〇:
「ん~!これ、一冊がすごく、重い…よっ」

その本は一見するとまるで
切り立った崖のようであり
大きさの違う細くて四角い石を
何枚も組み合わせた表紙だった

アル:
「ボクにとっては造作のない事でも、
君にとっては違うんだろうね…」

床に置いて本を捲る、もはや遠慮は無い

〇〇〇:
「―――『鋼(はがね)の刻印』
"強化"の力
術者の体を硬質化させる
刃すら通さぬ堅牢(けんろう)な肉体は
盾であり武器である
だが、心せよ
折れまいとする"想いの強さ"こそ
必要なのだと
触媒は…」

アル:
「"矛盾"とは、実に面白い言葉だよ…」

筆の音だけが乾いた空間に響いていた
 
【場面転換】大書庫 地下三層
靴の砂を落とし、進んだ先
所々"何か"が当たって
剥がれたような跡がある

アル:
「第三層…『鮮黄(せんき)』
"雷"の属性を司る
強大な威力故に轟音を伴(ともな)い、
古(いにしえ)の時代から恐怖の象徴とされた
多少扱いづらいが、応用力もある…
理解さえすれば、
広範囲に影響を及ぼすだろう」

〇〇〇:
「わぁ…この本、綺麗…」

その本は表紙を真鍮製の金属で固定された
息を呑む程に美しい、黄金の本

アル:
「そのチカラは果たして…」

〇〇〇:
「―――『天の裁き』
"断罪"の力
大いなる空、約束の地へと至る道
穢れを祓(はら)い、魂を還す"神の一撃"
それは、哀れな者を導く塔であり
それは、愚かな者を屠(ほふ)る鉄槌である
触媒は…」

アル:
「"神"か、"悪魔"か―――」

止まらない筆の音に、
アルは静かに哂うのだった
 
【場面転換】大書庫 地下四層
煌びやかさを後に引き、
生えている"花"を
踏まないようにして、進む

アル:
「第四層…『深緑(しんりょく)』
"風"の属性を司る
風の流れを読み取ったり、
向きや強弱を変えたり
変わった所で言えば、
他者の言葉を理解したり
植物を操る能力にも長けているね…」

〇〇〇:
「良い香り…この本からかな?」

躊躇いなく棚に手を伸ばし、本を抜き取る
高貴な縁取りが施された、深い緑色の表紙
ページを捲ると、仄かに花の香りがした

〇〇〇:
「―――『束ねる叡智(えいち)』
"変換"の力
生きとし生けるものが発した言語を理解する
それは術をかける者とて、例外ではない
"声"とは即ち生き物が発する"風"である
触媒は…」

アル:
「君もすっかり、虜(とりこ)だね…?」

歌うように小気味良く、
手帳に書き込んでいく
 
【場面転換】大書庫 地下五層
"苔生した"場所を避けて通る
湿気でよく木が腐らないものだと感心した

アル:
「第五層…『群青(ぐんじょう)』
"水"の属性を司る
形のない水はどんな"モノ"にでもなれる
生命の源であり、破壊の化身…」

〇〇〇:
「怖い事言わないで?
あ、この本とかどう?」

鱗のような物で覆われた、青い表紙の本
光が差し込んだ水底の如く反射している
一度濡れたであろう、歪んだページを捲る

〇〇〇:
「―――『深淵(しんえん)の檻』
"束縛"の力
対象を水の球体に閉じ込める
水圧、水流に変化を加えることで、
その拘束性はより凶悪さを増す
触媒は…」

アル:
「君なら…どっちかな」

不思議と流れるように、筆が乗った

【場面転換】大書庫 地下六層
吐く息は白くなり、床には霜が降りている
進むにつれ、感じる寒さが強くなっていく

アル:
「第六層…『紫紺(しこん)』
"氷"の属性を司る
万物は、その美しさに魅了され、
そして死に絶(た)える…
実に、神秘的だね」

〇〇〇:
「ここ、寒い…けど」

アル:
「誰しも…誘惑には逆らえない」

結露が生じている棚から一冊の本を取る
硝子細工の幻想的な装飾に思わず見惚れる
ページを捲ると、ひやりと冷たさを感じた

〇〇〇:
「―――『結晶のオペラ』
"創造"の力
氷の武器と兵士を創り出し、使役する
これは再生し、また無限である
冷気を受けた者は内部から凍結、
やがて永久(とこしえ)の眠りにつく
触媒は…」

アル:
「君とて、例外ではないよ…」

頬を赤らめて尚、踊るように軽やかに、
筆を走らせていた

【場面転換】大書庫 最深部
ここが終着点なのだろう
階段ではなく、
黒い石でできた道が続いている
表現し難い"異様さ"が、そこにはあった

アル:
「最深部は…『漆黒(しっこく)』
重力とか、時間とか…一言で言えば
どんな相手にも効力のある"業"が中心かな
でも正直、あまりオススメはしない
…反動が、強過ぎるからね
司る属性は…"闇"だよ?」

素材が解らない不気味な皮の表紙
幾つもの亀裂があり、
禍々しく明滅している
黒いページには、
白い歪な文字が書かれていた

〇〇〇:
「―――『真理より来たるモノ』
"与奪(よだつ)"の力
術者は"本質"を見抜く事が重要とされる
受け入れた先にあるものこそ、
"事実"であり、"真実"なのだから
触媒は…」

震える手で、筆を執る
…後悔のないように
書き終えた後、アルが口を開いた

アル:
「さぁ…戻ろう
此処には、長く居ちゃいけないからね」

何処か、寂しそうな声で―――

【場面転換】館の応接間

〇〇〇:
「ふぅ…見て!もう手帳に書き切れない!
偶然持ってたけど、あって良かったー!」

自慢げに手帳を広げてアルに見せる

アル:
「フフ、満足したようで何よりだ」

〇〇〇:
「とっても楽しかった!
本当に素敵な場所…」

アルが用意してくれた紅茶と
焼き菓子を堪能する

〇〇〇:
「あ~あ、
一冊だけでも持って帰りたいなぁ」

アル:
「構わない…」

〇〇〇:
「え?」

アル:
「どの子か選んで、持って行くと良い
それに選ばないと、
この森からは出られないよ」

〇〇〇:
「じゃあじゃあ!ここに書いた本、全部!」

アル:
「…」

紅茶を飲んでいたアルの手が止まる

〇〇〇:
「コレに、コレと、コレ!
あ、待って?コレと…あとコレも!」

アル:
「…ダメに決まっているだろう」

〇〇〇:
「えぇ!?」

アル:
「耐えられる"限度"という物がある
そんな事をしたら、
君は戻ってこれなくなる…
二度と、
日の光を浴びれなくなるかもしれない」

〇〇〇:
「…」

アル:
「そんな"リスク"を、
君は侵したいのかい?」

〇〇〇:
「そ、それは…」

アル:
「…火、水、雷、地、風、氷、光、
そして、闇
適正があるとはいえ
選べる属性は"1つ"だけ
さあ…君なら、どれを選ぶ?」

考え込む〇〇〇(アドリブ可 読み返しOK)

〇〇〇:
「………決めた」

その階層に行き、
一冊の分厚い魔導書を手に取る

〇〇〇:
「私は―――
『(階層の名)』の魔導書を選ぶ」

アル:
「…理由を聞いても、良いかな?」

〇〇〇:
「(アドリブ)」

アル:
「フフ…なるほどね、
実に君らしい答えだ
ボクは君の選択を尊重するよ…
むしろ―――」

〇〇〇:
「?」

ボソリと呟くアル

アル:
「君ならきっと…
"その子"を選んでくれると、
思っていたからね」

〇〇〇:
「…何か言った?」

アル:
「さて、ボクの役目は終わったようだ
…そろそろ、お別れの時間だね?
森を越えた先に、
向こう側へと繋がる"橋"が架かっている
"その子"と一緒なら、
君が望んだ場所に出られるはずだ…」

微笑むアル、
手の中の魔導書が脈動した気がする

【場面転換】館の玄関

〇〇〇:
「本当に、貰って良いの…?」

アル:
「ああ、"その子"は既に君のモノだよ?」

〇〇〇:
「ありがとう、アル…
今度会ったら"お礼"するね?」

アル:
「…期待しよう」

〇〇〇:
「じゃあ、また!」

駆けて行く後ろ姿を見送るアル
霧に消えた頃、ポツリと言う

アル:
「また会おう…『(階層の名)』の〇〇〇
次は、"あちらの世界"で―――」


アルの嗤い声が、静かに響く
二つの"赤い瞳"を輝かせて…





fin.






     ↓    ↓    ↓











【本編終了・ネタばらし】
幕間~作者からキャスト様への贈り物~
(この物語はクトゥルフ神話がモチーフです)

皆さんは、かつてこの世界で

"焚書(ふんしょ)"と呼ばれる行為が

行われた事をご存じでしょうか?

特定の思想、学問、宗教等を

排斥(はいせき)する為、

それを記した文献や絵を集めて

"燃やした"のです

もちろん、多くの"本"も燃やされました

この行いにより、様々な書物の

原典(げんてん)が失われましたが、

一部は隠蔽(いんぺい)され、守られました

"旧支配者"を信奉していた者達の手で

集められた魔導書は全て、この亜空間に

隔離・秘匿(ひとく)されたのです

今回登場した"アル"こと

アル・アジフ(ネクロノミコン)もその一冊

しかし、隔離された亜空間は魔導書の宝庫

集められた魔導書の"チカラ"を得たアルは

"身体"を具現化していたのです

それに目を付けたのが、旧支配者の一人

這い寄る混沌…"ナイアーラトテップ"

彼はこの亜空間に、

主人公―――"アナタ"を招待します

"色のない魔導書"を持たせて…

仲間である魔導書に目がないアルは

さぞ、興味を惹かれた事でしょう

付属品の人間なんてそっち退けで

"白紙の手帳"を口説き始めます

立派な"色のある魔導書"とする為に…

このお話は、『過去の出来事』

手帳と魂を"リンク"させられた状態のまま

"あの橋"を渡って来てしまったアナタ

これまで、もしくはこれから先、

なんとなくでも選んでいる"属性"は

アナタ自身が選んでいるのではなく、

本当は導かれているのかもしれません

その記憶…魂に刻まれた、

魔導書の"呼び声"によって―――

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