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​赤風のデスペラード

西部開拓時代、

それは荒野に夢と浪漫を求めた時代
馬を駆り、口笛を吹き、銃を撃つ、

自由と硝煙の時代…


無法者で溢れる町"BreakTown"

8年前、この町の秩序は崩壊し

住民達は絶望の淵に立たされた
そして今、
人々の心からは

希望の灯さえ消えかけている
しかし、砂嵐が吹き荒ぶ夜
町の酒場"DesertBullet"にソレは訪れた


―――赤い風と、共に

【登場人物】


J(ジェイ) 女性
荒野を駆けるさすらいの女ガンマン
ブロンドの長髪にツバ広ハットと赤いストール
くたびれたロングコートを身に纏う
バルバトスに両親を目の前で殺された過去があり、
その瞳は復讐に燃えている

使用銃:M1881レッドフレイム
38口径スイングアウト方式


キッド 男性
賞金稼ぎ、通称"早撃ちのキッド"
バルバトスと何らかの因縁があり、

その首を狙っている
鋭い洞察力を持ち、勝負運が強く、女好き
左利きである

使用銃:M1878スピリット
44口径ソリッドフレーム方式


マスター 男性
デザート・ブリットを経営する隻眼のバーテンダー
8年前、バルバトスとの闘いで片目と妻子を失い
町の人々の安全を条件に配下となった
(本名はウィリアム ナレーション兼任)

使用銃:M1873サンドオーシャン
45口径ソリッドフレーム方式


バルバトス 男性
ブレイク・タウンを牛耳る悪逆非道の賞金首
黒いコートに身を包む筋肉質な体躯の男
名のある悪党ですら距離を置く凄腕のガンマン
力こそが全てであり、

人の命は自分を高める物としか見ていない

使用銃:Mark3ブラックファルコン
45口径トップブレイク方式

 

 

1881年 西部


マスター:

(N)此処は悪党に支配された町、

ブレイク・タウン
町の酒場、デザート・ブリットは

今夜、珍しく賑わっていた…
そこへ、スイングドアを押し広げ、

一人の"女"が入って来る
 

(SE)カウンター席へと歩いて行く女


マスター:

「…ご注文は?」
 

J:

「バーボン、ダブル」


マスター:

「かしこまりました…チェイサーは」


J:

「いらない」


女が席へ座り、

隻眼のバーテンダーが酒を注ぐ
若い男がカウンター席へやって来る


キッド:

「へ~?女のガンマンなんて、珍しい」


J:

「…なにか用?」


キッド:

「いや、ちょっと気になってね
マスター!テキーラをショットで、
塩とライムも付けて?
あと、この人の代金俺が払うよ」


J:

「勝手なことしないで、なんなのアンタ」


キッド:

「俺の名は"キッド"

良ければ名前、教えてくれる?」


J:

「お断りよ、色男
どーしてもって言うなら…勝負しな」


キッド:

「それは銃で?」


J:

「それ以外にある?」


キッド:

「こっちじゃ、ダメ?」


取り出したのは"トランプ"

 


【場面転換】席に座る二人の前
(SE)カードが向い合せで置かれる
ポーカーの"スリーカード"と、"フラッシュ"
キッドはフィンガースナップ


キッド:

「BINGO♪また俺の勝ち!」


J:

「…さっきから何、それ」


キッド:

「決め台詞さ、"J(ジェイ)"も使えば?」


J:

「嫌よ、子供じゃないんだから」


キッド:

「スカッとするよ~?決め台詞って!」


J:

「柄じゃないわ」


キッド:

「とにかく、俺の勝ち!教えてよ、Jの事」


J:

「知ってどうすんのよ」


キッド:

「知りたいんだよ!

Jはどうしてこんな辺境の―――」


J:

「(遮って)"復讐"…」


キッド:

「…なんだって?」


J:

「復讐の為よ、"ある男"を殺しに来たの」


キッド:

「ソイツが、この町にいる?」


J:

「ええ、そういう噂」


キッド:

「あー…俺じゃないよね?」


J:

「違うわよ」


キッド:

「ハートは撃ち抜かれたけど?」


J:

「茶化すならやめる」


キッド:

「冗談だって!悪かったよ、続けて?」


J:

「…ソイツは大物の賞金首、
傍若無人に振る舞い、歯向かう者は皆殺し、
善人を嘲笑いながら、悪事を繰り返す、
最低の男―――」


キッド:

「"殺戮"のバルバトス…か?」


J:

「知ってるの?」


キッド:

「この業界で知らない奴はいない…
それに、俺もちょっとした"因縁"があってね」


J:

「どんな?」


キッド:

「秘密♪」


J:

「呆れた」


キッド:

「また勝負する?」


J:

「やめとく

アイツの仲間じゃなさそうだし、

他を当たるわ」


キッド:

「今夜、奴はここに来る」


J:

「…なんですって?」


キッド:

「だろ?マスター」


マスター:

「ご予約されてます…」


J:

「どうして知ってるの」


キッド:

「こんな賑わってんのに、

あの奥のテーブル席だけ空いてるのは

変だと思わないか?
町の住人や悪党共を黙らせる"誰か"が、

そこに座るからさ」


テキーラを片手に、

奥のテーブル席を顎で指すキッド


J:

「"特等席"って訳…いかにもアイツらしい」


キッド:

「…噂をすれば、だな」
 

酒場の入り口を見やるキッド
黒いコートに身を包んだガタイの良い男が
護衛達を引き連れて酒場へ入ってくる

 

バルバトス:

「随分景気が良さそうだなぁ…マスター?
今月分の"払い"は、期待できそうだ」

 

マスター:

「はい…お陰様で、バルバトス様
いつもの御席をご用意しております」

 

バルバトス:

「上等なウィスキーを頼む、ロックでな」
 

背を向け、席に歩いて行くバルバトス
 

マスター:

「すぐ、お持ち致しま―――」
 

キッド:

「(遮って)おいバルバトス」
 

立ち止まり、

ゆっくりとキッドに振り返るバルバトス
 

バルバトス:

「…なんだ、小僧」
 

キッド:

「俺と、決闘(デュエル)しろ」
 

店内がザワつく
 

マスター:

(N)"決闘"
互いの同意の下で行われる一騎打ち
名誉を傷つけられた者、
大切なモノを奪われた者が、
己の命を賭して行う、"真剣勝負"
申し出を受けた者は、自らの誇りの為に
戦わなくてはならない
 
J:

「ちょっとアンタ―――」
 

バルバトス:

「フッ…何かと思えば、決闘だと…?
テメェみてえな青臭ぇ餓鬼が、
この、俺・様・と?(失笑)
ふざけてんじゃねぇ!!」

 

バルバトスの護衛達が

一斉にライフルでキッドを狙う
見据えるキッド 騒然となる店内

 

マスター:

「バ、バルバトス様!店内で騒動は―――」
 

バルバトス:

「黙れウィリアム…ただのバーテンが、
俺様に指図するんじゃねえ!
今すぐ、ここで2つ死体を

こさえてやってもいいんだぜぇ…?」
 

マスター:

「うっ…!」
 

バルバトスに成す術がないマスター
 

キッド:

「落ち着けよ、バルバトス
別にお前をからかってる訳じゃない…
俺は"借り"を、返しに来たのさ」

 

バルバトス:

「借り、だとぉ…?」


J:

「…?」


キッド:

「8年前、

俺はお前によって谷に突き落とされた
母さんと一緒にな…」


マスター:

「…8年前?(呟く)」
 

バルバトス:

「それで、そのお袋にお願いされたってか?
まるで子供のおつかいだなぁ…?」

 

キッド:

「母さんは死んだよ、俺をかばって…
俺は3日間昏睡状態だった
目覚めた時、俺は自分の記憶を無くしていた
だが、お前の事だけは覚えていた…!
父さんを殺し、母さんを殺した、お前だけは…

忘れはしなかった!」
 

バルバトス:

「(食い気味に)それがどうしたぁ!!」


キッド:

「重要なのはここからさ!
お前はたった一人の子供を殺せなかった
あの"殺戮"と恐れられたバルバトスがだ!
二つ名に傷がつくなあ?え?
俺が生きて決闘を申し込んだ時点で、
お前はもう受けるしか無いんだ!
そうでなければ名誉も名声も取り戻せない!
此処にいる全員が証人だ!!」


見渡せば、店の客も部下達も全員が固唾を飲んでバルバトスを見ている
ここで引けば、力を誇示して築き上げた物すら無くなるのは明白だった

 

キッド:

「お前から"殺戮"を取ったら何も残らない…

ただの"卑怯者"だ」


バルバトス:

「…いいだろう、その決闘受けてやる
日時は明日午後16時、場所は酒場の前だ
ウィリアム、テメェが審判をやれ…

できねぇとは言わせねぇ
断ったら、

町の住人が何人か棺桶に入る事になるぞ?」
 

マスター:

「承りました…」
 

バルバトス:

「もっとも、明日は確実に棺桶が一基
必要になるがなぁ…ハハハハハ
さあ野郎共!今夜は飲むぞ!宴だあ!!」

 

歓声で盛り上がる店内
大物賞金首と、最年少賞金稼ぎの決闘が
正式に認められた瞬間だった
 


【場面転換】酒場の二階
バルコニーで話をする二人

 

J:

「アンタもだったの」
 

キッド:

「そりゃ、こっちのセリフだ」
 

J:

「…本当なの?」
 

キッド:

「何が?」
 

J:

「とぼけないで、

アイツに両親を殺されたって話」
 

キッド:

「…ああ、本当だ
町の保安官だった父さんは奴に撃たれ、
俺は見せしめとして母さんと谷に落とされた
下が川になっていて、俺は運よく助かったが
母さんは…死んだ
そして流れ着いた先で、

インディアン達に救われた
その時に貰った名前が"キッド"だ…
俺を救ってくれた彼らの為にも、

奴に近づく為にも、
悪党を狩る賞金稼ぎになったのさ…」

 

J:

「…アタシも」
 

キッド:

「ん?」


J:

「アタシもね…子供の頃に、
目の前でアイツに両親を殺されたの
父は炭鉱夫で、生活は大変だったけど、
家族三人で仲良く暮らしてた
ある日、父が鉱脈を見つけてね?
…お金になるって喜んでたわ
それを、あの"悪魔"に狙われた
アイツは権利書か命かなんていう、
理不尽な要求を突き付けてきた…
取引を断った父と母はその場で殺されたわ
そして、故郷の村もアイツに焼かれた
アタシはただ、

それを見ている事しかできなかった…
今でも時々…夢に見るの」

 

キッド:

「お互い、天涯孤独か…つらかったな」
 

J:

「アタシは一人よ
これまでも、そしてこれからもね…」


キッド:

「君はもう一人じゃない、俺がいる
俺が奴を倒す…この手で」

 

J:

「勝算はあるの?」
 

キッド:

「…勝つさ、その為に来たんだ
"早撃ち"のキッドをナメるなよ~?バーン♪」

 

J:

「…そう」


キッド:

「でも本当にマズイのは、
奴の持つ"隠し玉"だ…
噂じゃソイツで列車強盗をやって、
抵抗してきた連中を
車両ごと蜂の巣にしたらしい
かなりの液体燃料を使うって話だけど
ソイツが出て来たら、まず勝ち目は無い」


J:

「…」
 

キッド:

「ま、その時は…"コイツ"を使う」


キッドはポケットから赤い弾丸を取り出す
 

J:

「ソレは?」
 

キッド:

「炸裂焼夷弾(さくれつしょういだん)だ、
燃料に引火して内部で爆発する

…俺が創った♪」
 

J:

「…口径は?」


キッド:

「40、俺の銃は特殊でね…

44と一緒に扱えるのさ」


J:

「アタシのもよ…

357(さんごなな)と、40…」


キッド:

「それは良かっ―――

変わった銃だな?どこの?」
 

Jの銃を見て訝しむキッド
 

J:

「M1881"レッドフレイム"…
知り合いのガンスミスに譲って貰ったの」


キッド:

「へー…ちょっと良く見せて?」
 

J:

「イヤよ…

"自分"を知られるの、あんまり好きじゃない」


腕を組み、壁に凭れ掛かるJ


キッド:

「俺は知りたい」


J:

「冗談はやめて」


キッド:

「本気だ!」
 

詰め寄るキッド


J:

「どうしてアタシに拘(こだわ)るの」


キッド:

「心を、"撃"たれたから」


J:

「…バカみたい」


キッド:

「夢中なだけさ」


J:

「火傷するわよ?」


壁に手を付き、Jの退路を断つキッド


キッド:

「望むところだ…」


唇を重ねる二人(リップ音はご自由に)

【場面転換】15:59酒場前
キッドとバルバトス、銃のメンテナンス中
その光景を観客が建物の前や窓から見守り
屋根上にはバルバトスの護衛が数名、
ライフルを持って待機している
マスターがその場の全員に聞こえるように声を張る


マスター:

「これより、"殺戮"のバルバトス対
"早撃ち"のキッドによる決闘を行います!
両者、前へ…」

 

歩み出る両者、周りからの歓声
キッドには女達の黄色い声援もあがる


バルバトス:

「よく逃げなかったなぁ…?小僧」


キッド:

「…お前こそな」


マスター:

「ルールを確認します…!
お互い背中合わせの状態となり、
カウント方式で1歩づつ進みます
カウントがゼロになったら振り返って発砲
最後まで倒れずに立っていた者が

勝者となります
カウントがゼロになる前に発砲した場合や、
振り返らず、

背を向けた状態で発砲した場合は、
ルール違反と見なし、

その場で処刑されます!」
 

バルバトス:

「そん時ぁ、

俺様のガトリング砲が火を噴くぜ…?」


広場に設置された重厚な回転式連装砲を見てバルバトスがニヤリと笑う
動力に液体燃料を使っているのか、タンクに管が何本も繋がっている


J:

「キッド」


キッド:

「わかってる!見ててくれ!!」


J:

「…(頷く)」


マスター:

「カウント、開始!」

キッド:

「"決闘"(デュエル)!」


バルバトス:

「"決闘"(デュエル)…」

 
マスター:

「―――5!」


バルバトス:

「あの世に送ってやるよ」


マスター:

「―――4!」


キッド:

「…仇を討つ」


マスター:

「―――3!」
 

バルバトス:

「テメェじゃ、無理だ」


マスター:

「―――2!」


キッド:

「侮ると痛い目みるぞ」


マスター:

「―――1!!」


互いに立ち止まり、一瞬の静寂


マスター:

「―――0!!!」


(SE)銃声、先に撃ったのはキッド
だが、甲高い金属音と共に弾かれる


バルバトス:

「ゴフッ…フフ…フハハハハハ!」
 

キッド:

「…バカな!?確かに心臓を―――」


バルバトス:

「甘ぇえんだよ小童があああ!!!」


(SE)銃声、バルバトスの弾がキッドの左肩に命中


キッド:

「ッ!うぁあああ!!」


倒れるキッド、観客の女達が悲鳴を上げる


キッド:

「ぐ…くっそ…!」


バルバトス:

「勝負あったなぁ…小僧
これで、…TheENDだ」

 

キッド:

「まさか…"鉄板"…?
この、卑怯者が…ッ!」


バルバトス:

「勝った奴が、正しいんだぜぇ?」


撃鉄を再度起こすバルバトス


マスター:

「やめてくれ!バルバトス!!」


倒れているキッドに駆け寄るマスター


バルバトス:

「…"様"は、どうした?ウィリアム」


キッド:

「マス…ター…?なぜ―――」
 

マスター:

「この子は…私の子だ」


キッド:

「―――ッ!?」
 

マスター:

「8年前、当時保安官だった私は
お前との"決闘"で敗れ、片目を撃ち抜かれた
そして、妻と子を…
セシリアと、ビリーを…谷に落とされた…

7年間捜したが、行方は分からなかった
記憶喪失だったなんて…
そうか、セシリアは、もう…

すまなかったな…ビリー」


キッド:

「マスターが―――父さん…?」


バルバトス:

「ほほう…感動の再会ってワケか?
残念だったなぁ?ウィリアム…
"また"息子を失う事になるとは、フフフ」


キッドの頭に照準を合わせるバルバトス


マスター:

「やめろ!既に決着はついた!
この子はもう戦えない!…やるのなら―――」


マスター、銃を取り出し、構える


マスター:

「…私が、相手だ」


バルバトス:

「なんのつもりだぁ…ウィリアム?
テメェ、俺様に歯向かうとどうなるか、
知らねぇ訳じゃねえよなぁ?」


マスター:

「覚悟の上だ」


バルバトス:

「そうか…アディオス、ウィリアム」


マスターに照準を合わせるバルバトス


J:

「…待ちな」
 

一陣の風が吹き、Jがゆっくり歩み出る


バルバトス:

「あぁん?…誰だ!」


キッド:

「J!」


J:

「アタシも、アンタに"決闘"を申し込むよ」


バルバトス:

「…今度は小娘か、どいつもこいつも
威勢が良いのは結構だが、勇敢と無謀を
履き違えてんじゃねえだろうなぁ?」


J:

「アタシも"リベンジャー"さ
土地の権利書を奪われ、
家族を殺され、村を焼かれた…
その首、狩らせてもらうよ?バルバトス」


バルバトス:

「権利書だと…?あの鉱脈か…
まだ、生き残りがいたとはな…」


キッド:

「どーするバルバトス…

つっても選択肢は無ぇよな?
この決闘から逃げたらそれこそ

"卑怯者"どころか、
ただの"臆病者"だ…そうだろ?」


バルバトス:

「上等だぁ…小娘ぇ、
先にテメェから始末してやろう…
来いよ…かかってこい!
俺様が"最強"だという事を、教えてやる!」

 

Jは内ポケットから金色に輝く一枚の硬貨を取り出す


J:

「ルールはコインを使って行う"早撃ち対決"…
コインが地面に落ちたのを合図に撃ち合い、
最後まで立っていた方が勝つ…どう?」


バルバトス:

「好きにしやがれぇ!

勝つのは俺様だぁ!!」


J:

「…マスター、お願い」
 

硬貨を投げ渡すJ、受け取るマスター


マスター:

「お任せください」


マスターは音が響き易い床の上に移動する


マスター:

「それでは…参ります!」

J:

「"決闘"(デュエル)」


バルバトス:

「"決闘"(デュエル)!」


(SE)弾かれた硬貨が回転しながら打ち上がりやがて重力で落下…

硬貨が床にぶつかり、音が鳴り響く
(SE)銃声
バルバトスの弾がJの美しいブロンドの髪を撃ち抜き、幾本か千切り飛ぶ

しかし、それよりも速く…Jの弾がバルバトスの右手を撃ち抜いた


バルバトス:

「ぐ…ぬぅううう!!ば、ばかなぁあ
この、俺様がぁあ…!」


膝をつくバルバトス


J:

「…フッ(銃口に息を吹きかける)」
 

クルクルと銃を回し、ホルスターへ納める
 

キッド:

「すげぇ!!やったな!J!」


肩を押さえ近寄るキッドと支えるマスター
 

J:

「ええ…肩、大丈夫?」


キッド:

「へへっ掠(かす)り傷だよ」


J:

「そう…マスター?」
 

マスター:

「大事ありません…
なんとお礼を申し上げて良いか…」

 

バルバトス:

「畜生がぁ…よくも俺様を…!
オメェら何してる!

ソイツらを撃ち殺せぇ!!」
 

バルバトスが屋根上の護衛に指示を出す
 

J:

「ッ!?」

(SE)銃声、しかし倒れたのは護衛達
右手に銃を持ったキッドとマスターが、
背中合わせでの鮮やかな早撃ち

 

キッド:

「ヒュー♪(口笛)やるじゃん?」


マスター:

「私も、まだまだイケるでしょう?」


J:

「これで貸し借りは無し、ね

…ん?アイツは―――」


気づけば倒れていたはずのバルバトスが

ガトリング砲の前に移動していた
 

バルバトス:

「小癪な真似しやがって…

こうなったら仕方ねぇ…!
何もかもぶっ壊してやる!!俺様の物に、
ならねぇのならなあああ!!!」


ガトリング砲で狙いをつけるバルバトス


マスター:

「まずい!逃げろ!!」


バルバトス:

「くたばれぇ!!!」

 

(SE)金切声を上げながら弾丸が襲い掛かる
とっさに酒場に逃げるJとキッド
マスターと町の住民も建物内に避難する


J:

「―――ッ!」


右腕を被弾するJ


バルバトス:

「隠れても無駄だあ!

蜂の巣にしてやるぁあああ!
この町も!テメェらも!
消えてなくなれぇええ!!
ハーーーッハッハッハッハア!!!」


尚も撃ち続けるバルバトス


キッド:

「大丈夫か!?J!!」


J:

「掠り傷よ…でも、これじゃうまく狙えない」


キッド:

「俺が一緒にやる、言ったろ?
独(ひと)りじゃないって」


J:

「キッド…」
 

Jに手を添えるキッド、そしてリロード
…装填するのは"赤い弾丸" 

 

バルバトス:

「金も!!権力も!!力も!!
この世の"全て"が!俺様の、
モノだぁあああああ―――!!!」


ガトリング砲の燃料タンクに照準を合わせるJとキッド
 
(SE)撃鉄を起こす音

 


J:

「BINGO(同時に)」


キッド:

「BINGO(同時に)」

 

 
(SE)銃声

放たれた弾丸が燃料タンクを撃ち抜き
爆薬入りの特殊弾が内部で炸裂、

バルバトスの全身を焼く


バルバトス:

「ぐぅおおお!!

あああああああああ!!!」


断末魔の叫びが響く
やがて、辺りは静寂に包まれた
巨悪は滅びたのだ
 
十分な間


J:

「…やったわね、アタシ達」


キッド:

「今度こそ、本当に終わった…」


J:

「いいえ、ここから…はじまるのよ?」


キッド:

「そっか…そうだな」


J:

「…フフ」


キッド:

「…ハハ」

 
その後、町の人々に救出される二人
マスターも、皆が、笑顔だった

 


【場面転換】17:17大通り
夕日が町を美しく照らしている


キッド:

「…J!探したぞ!!」


J:

「キッド…傷の具合はもういいの?」


キッド:

「ああ、平気さ!マスター…父さんも、
穴だらけになった酒場を建て直すって

意気込んでるよ…
なんせ保安官を掛け持ちだもんな!
これから、忙しくなりそうだ」


J:

「そうね…この町はアンタ達に任せるよ」


馬に乗るJ


キッド:

「もう行くのか、J?…寂しくなるな」


J:

「ジェーン…」


キッド:

「…え?」


J:

「ジェーンよ?アタシの名前は、ジェーン、
…ジェーン・レッドウィル」

 

ジェーンはそっと微笑み、背を向ける


キッド:

「―――ジェーン!また…会えるか?」


ジェーンは振り返らず少し考え

一言、告げる


J:

「…風に聞いて?」


(SE)鞭を打ち、馬を走らせる



マスター:

(N)そうして彼女は、旅立った
砂塵を纏った風が吹く、荒廃した世界へ
夢と浪漫と口笛が鳴り響く、
荒野という世界へ…


キッド:

「自由な奴だ…
まるで荒野の―――"赤い風"…」

マスター:

(N)風のように現れて、

風のように去って行く
悪党達から恐れられる、孤高の女ガンマン
いつしか彼女は、
"こう"呼ばれるようになった…

 


『赤風(あかかぜ)のデスペラード』

 

 

 

 


Fin.

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